複利?インフレ?何それ…。金融リテラシーの必要性と最低限身に付けたい15の知識

金融リテラシー

突然ですが、皆さんに質問です。金融リテラシーが高いとはどういうことでしょうか。

2020年から2022年にかけて、小学校、中学校、高校での金融教育が順次に義務化され、金融リテラシーが高い人と低い人の差が、今後さらに拡大するでしょう。

金融リテラシーが低い人は、投資詐欺や金融トラブルに巻き込まれる可能性が、高リテラシーの人に比べて高くなっています。金融リテラシーが高いということは、より豊かで充実した生活を送れる可能性が高いということなのです。

この記事では、2022年に実施された金融リテラシー調査の結果をもとに、金融リテラシーが必要な理由や、金融経済教育研究会が挙げている「最低限身に付けるべき金融リテラシー」について、FP資格を持つ私が解説していきます。

  • 金融教育を受けたことがない
  • 金融のことはさっぱり分からない
  • インフレとインフラの区別も曖昧…

こんな人でも大丈夫。この記事を読んでいる時点で、十分なリテラシーを身に付けられる資質を持っています。金融リテラシーを身に付けて、豊かな生活を送るための準備をしましょう。

(当記事で使用しているグラフは全て、金融広報委員会「金融リテラシー調査」(2022年)から引用しています。)

金融リテラシーとは「より良い生活を送るための知恵」

金融リテラシーに関する理解を深めるために、いくつかクイズを用意しました。各設問について、正解だと思うものを1つずつ選んでください。

問1、「人生の三大費用」と言えば、何を指すでしょうか。
  1. 一生涯の生活費、子の教育費、医療費
  2. 子の教育費、住宅購入費、老後の生活費
  3. 住宅購入費、医療費、親の介護費
  4. わからない
問2、金利が上がっていくとき、資金の運用(預金等)、借入れについて適切な対応はどれでしょう。
  1. 運用は固定金利、借入れは固定金利にする
  2. 運用は固定金利、借入れは変動金利にする
  3. 運用は変動金利、借入れは固定金利にする
  4. 運用は変動金利、借入れは変動金利にする
  5. わからない
問3、10万円の借入れがあり、借入金利は複利で年率20%です。返済をしないと、この金利はでは、何年で残高は倍になるでしょうか。
  1. 2年未満
  2. 2年以上5年未満
  3. 5年以上10年未満
  4. 10年以上
  5. わからない

出典:金融広報中央委員会:金融リテラシークイズ(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/literacy_quiz/)

選べましたか?正解は…、

 

問1が2、問2が3、問3が2です。

問2は、金利が上がっていく状況なので、運用収入が増加する「変動金利」を選択するのが適切。逆に、借入れは、コストの増加を抑える「固定金利」を選択するのが適切です。

問3は、10万円を年複利20%で運用すると考えると、1年目で12万円(10万×1.2)、2年目で14.4万円(12万×1.2)、3年目で17.28万円(14.4万円×1.2)、4年目で20.736万円(17.28×1.2)となるので、②を選ぶことができます。「72の法則」を使っても計算できます。

「72の法則」とは、お金が倍になる年数が分かる算式(72÷金利≒お金が倍になる年数)です。

今回はクイズですので、間違えても問題ありません。しかし、実生活おいてこのような場面に遭遇した場合、選択を間違えると、資産の大きな損失に繋がります。

このような場合で適切な判断をするには、金融リテラシーが必要不可欠です。つまり、金融リテラシーとは、「より良い生活を送るために必要な金融や経済に関する知識」のことなのです。

低リテラシー者ほど金融トラブルに巻き込まれる

冒頭では、金融リテラシーが低い人は金融トラブルに巻き込まれやすい、と述べました。しかし、金融トラブルを経験した割合が最も高いのは、多少の金融リテラシーを持つ人なのです。次のグラフをご覧ください。

縦軸は経験者の割合、横軸は金融リテラシー調査の点数になっており、点数が低いほどリテラシーが低いということになります。

グラフを見ると、どの年齢層においても、21~40点という中途半端なリテラシー層の金融トラブル経験率が高いということが分かります。中途半端な理解がトラブルの原因になることを、如実に表していると言えるでしょう。

皆さんは自己の知識に対して過信することなく、正しい知識を身に付けてください。

金融リテラシーは人生を豊かにする

上のグラフは金融教育の効果を表しています。年齢層別に、「金融教育を受けた」と認識している人と、「金融教育を受けていない」と認識している人の金融リテラシー調査の正答率を比較しています。

 

 

グラフから分かるように、どの年齢層においても、「金融教育を受けた」と認識している人の方が、正答率は高くなっています。

また、年収別に正答率を比較したグラフ(下側)を見ると、年収が高いほど、正答率は高くなっていることが分かります。

年収が高いから正答率が高いのか、正答率が高いから年収が高いのか、あるいは両方か。これらの因果関係は分かりませんし、年収が高い=豊かな人生とも限りません。

しかし、既に述べたように、金融リテラシーの有無は人生の豊かさに直結します。高い金融リテラシーを持つことが、より良い生活を送るための第一歩なのです。

最低限身に付けるべき金融リテラシー

ここからは、4分野・15項目の「最低限身に付けるべき金融リテラシー」について簡単に紹介していきます。あくまでも最低限ということを忘れないでください。

分野1. 家計管理

(1)適切な収支管理(赤字解消・黒字確保)の習慣

お金を貯める一番簡単な方法は支出を見直すこと。支出の中でも通信費や光熱費などの固定費は、一度見直すと効果がずっと続くのでオススメです。

分野2. 生活設計

(2)ライフプラン(人生設計)の明確化と資金確保の必要性の理解

自分がいつ、どのタイミングでいくらお金を使うか把握していない人が多すぎる!大体でいいので、自分が将来必要になる金額(特に人生の三大費用)は理解しておきましょう。

分野3. 金融と経済の基礎知識と金融商品を選ぶ能力

【金融取引の基本としての素養】

(3)契約にかかる基本的な姿勢の習慣化

(4)情報の入手先や契約の相手方である業者が信頼できるかどうかの確認の習慣化

契約書をよく読む、相手方や日付・金額・支払い条件などが明記されているかを確認、不明点があれば質問などは必ず行うようにしましょう。

(5)インターネット取引の利点と注意点の理解

金融取引の場合、インターネットより対面で取引する方が危険です。あなたの無知につけ込んで、様々なぼったくり商品を購入させようとしてきます。十分な金融リテラシーを身に付けるまで、なるべく金融取引は行わないようにしましょう。

【金融分野共通】

(6)金融・経済の基礎知識(単利・複利などの金利、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターン等)や金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択について理解

色々な用語が出てきましたが、どれも難しいものではありません。詳しくは別の記事で解説します。

(7)取引の実質的なコスト(価格、手数料)について把握することの重要性の理解

先ほど少し触れましたが、世の中には様々なぼったくり商品が存在しています。これらの商品を見分けるコツは「手数料」です。詳しくは別の記事で解説しますので、ここでは「手数料が大切」とだけ覚えておいてください。

【保険商品】

(8)自分にとって保険でカバーしたい事態(死亡・病気・火災等)が何かの理解

日本人は保険に入りすぎです!保険に加入する基準は、滅多に起きないけど、起きたら甚大な損害を被るものです。この基準を忘れないでください。

(9)カバーすべき事態が起きたとき、必要になる金額の理解

日本は社会保障制度が充実しているため、国から貰える保険金が多く存在しています。民間保険に加入している人は、もちろん知っていましたよね?

【ローン・クレジット】

(10)住宅ローンを組む際の留意点の理解

(11)無計画・無謀なカードローンやクレジットカード等の利用を行わないことの習慣化

成人年齢の引き下げに伴い、保護者の同意なしでクレジットカードを作ったり、ローンが組めたりするようになりました。「リボ払い」だけは絶対にしてはいけませんよ。

【資産形成商品】

(12)高いリターンを得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことの理解

低コスト・高リターンの商品などこの世にありません。そのような商品を勧めてくる人と出会ったら、すぐにその場を立ち去りましょう。

(13)資産形成における分散(運用資産の分散、投資時期の分散)の効果の理解

(14)資産形成における長期運用の効果の理解

資産運用のコツは「長期・積立・分散・低コスト」です。このことを知っているかどうかで、将来得られる資産が大きく変化します。

分野4. 外部の知見の適切な活用

(15)金融商品を利用するにあたり、外部の知見を適切に活用する必要性の理解

金融トラブルに巻き込まれた、あるいは巻き込まれそうになったら、自分の力だけ解決しようとせず、専門家や信頼できる知人に相談するようにしてください。また、金融トラブルの相談窓口として「消費者ホットライン(188)」というものがあります。困ったときは活用してみてください。

最後に

この記事では、金融リテラシーの必要性や、最低限身に付けるべき金融リテラシーについて解説してきました。

既に何度も述べているように、この記事は、金融リテラシーの最低限を解説したものに過ぎません。最低限でもないよりはマシですが、豊かな生活を送るには、少々心もとないです。

当ブログでは、この記事で解説した「最低限身に付けるべき金融リテラシー」を、体系的かつ具体的に記した「金融リテラシーマップ」の8分野(家計管理や資産形成など)を、分野ごとに詳しく解説しています。

自分が興味を持った分野だけでも構いません。さらなる金融リテラシーを身に付けて、お金のことで困る人生とはオサラバしましょう。

参考資料

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